「遅い、一分遅刻。」

冷たい、氷のような目で睨みつけられる。

「ごめんなさい…」

昨日緊張して眠れなかったせい?

直前まで服に悩んでいたせい?

髪の毛がこういう時に限ってうまくまとまらなかったせい?

色々原因は考えられるけど、なにより一番はこのはじめての、はじめての!

人生初のデートというビックイベントにドキドキしすぎていたせいです!

綾瀬はるひ、十六歳。

この春から高校二年生になったあたしには大好きな人がいる。

彼の名前は一ノ瀬玲君。

あたしと同じ、十六歳。

初めて彼を見たとき、とてつもなく綺麗な顔から目が離せなかった。

かっこいいとか、イケメンとか、そういうんじゃなくて、とても綺麗に整った顔。

細身の体型に、全体的に色素が薄め。

茶色いサラサラの髪の毛、白い透き通るような肌。

それから何よりも引きつけられたのは大きな目。

少し冷たく見えるけど、すごく綺麗で吸い込まれそうになる。