観覧車から降りると、なんだか照れくさくてお互いの顔を見れなくて。

だって今日から、この人は私の彼氏、なんだよね。

「あっ、綾瀬さん!」

「はい!」

なんだかすっごく、恥ずかしい。

隣を歩くだけなのに。

「まずは、どうしましょう?」

まずは?

私は分からなくて、一ノ瀬君を見上げる。

「俺、付き合うってことしたことないから、どうすんのか全くわかんなくて…」

そうだ、それは私も。

でも今まで恋に恋してきたわたし。

少女漫画や恋愛ドラマをたくさん見て、憧れて。

「まずは、…呼び方ですかね?」

「呼び方?」

確か恋人同士は名字じゃなくて…

「りっ、律君?」

自分で言っといて顔から火が出るほど恥ずかしい!

私ったら、一人で勝手に突っ走っちゃってる!

やだ!もう!やだ!

「じゃあ俺は、…ひ、ひな?」

ひな

昔から呼ばれてきたこの名前が、こんなに甘い響きを持ってるなんて、私は知らなかった。