でも今の、一ノ瀬君に聞こえてないよね!?

「エマはもう日本には慣れた?」

「うん!楽しいよー!みんな優しいし…」

屈託無く笑うエマの笑顔は太陽みたいに明るい。

あっという間にクラスに馴染んで、誰とでも仲良し。

そんなエマが羨ましくて、だけど友達になれて嬉しい。

「エマ!」

えっ…!?

この声って…

「なーに、直!」

「この前言ってたCD持ってきた。はい。」

「わーい!ありがと!何曲目が好き?」

「んー、五曲目とかバラードだけど力強い歌詞で好き。」

「了解!」

目の前で繰り広げられる楽しそうな会話。

エマが一ノ瀬君から受け取ったのは見たこともない外国のアーティストのCD。

そして何より、今、一ノ瀬君はエマって下の名前で呼び捨てにした。

そのことがショックで、なんだか不安になって、胸が苦しい。

「エマも今度持ってきてくれるんでしょ?」

「持ってくる!パパが集めてるの、昔のCD。」

だめだ、このままじゃあたし、すごく嫌なやつになってしまう。

「あたし、トイレ行ってくる!」