はあ…

こんな自分、大嫌い。

「咲耶!」

「夏川…」

夏休み、夏川と一度だけ映画に行った。

はっきりさせたくて、このことだけは。

だからあたし、勇気を振り絞った。

「好きな人がいるから、夏川とは付き合えない。」

そう言った時、あたしは顔を上げられなかった。

でもこれ以上ズルズル先延ばしにするのは嫌だったから。

一ノ瀬君に思いが届かなかったら夏川に、なんでそんなことは絶対したくないし。

あの後の部活ではいつも通りに接してくれる夏川。

優しい夏川はあたしみたいにうじうじしないんだ。

「今日部活ミーティングからだって。新幹部とかの引き継ぎらしい。」

「わかった、ありがとうね。」

「…お前、顔疲れすぎ。ちゃんと寝ろよ。」

夏川にも言われちゃった。

今日から二学期、また毎日会ってしまう、いや、嬉しいんだけど、けど顔を合わせる日々が始まった。

夏休み明け、教室で見た一ノ瀬君は相変わらず綺麗で。

ちょっとだけ背が伸びたような気がする。