「とにかく俺は簡単には諦めれない。」

そう言うと夏川は体育館を出て行った。

なんだか気持ちが重くなった。

このあとせっかく一ノ瀬君と会えるのにこんな気持ちで会うなんて。

夏川へのこと、あたしがはっきりしないからいけないんだ。

あたしは他に好きな人がいるんだから、断ればいいのに。

それだけなのに夏川を傷つけるのがなんだか後ろめたくて、怖いんだ。

モヤモヤした気持ちのまま家に帰るとお姉ちゃんと琢磨君が待ち構えていた。

「咲耶〜おかえり!浴衣着せてあげるからおいで!」

「いや〜咲耶がデートだなんてお兄ちゃん感激だなぁ。」

琢磨君、デートだなんてそんな…!

「琢磨ってばお父さんみたいなこと言わないでよ。ほら咲耶、いこ!」

お姉ちゃんは素早い手つきであたしに浴衣を着せてくれた。

お姉ちゃんがお祭りに行く時着ていたこの浴衣。

あたしにも似合うかな?

丈はぴったりだけどお姉ちゃんは美人だから。

「髪型もね、ショートヘアでもアレンジできるのよ。」