浴衣着て夏祭り…

すごく憧れていたことだ。

毎年綺麗におめかしして浴衣を着て、下駄を鳴らしながら出かけて行くお姉ちゃんを見てあたしもいつか、好きな人と夏祭りに行きたいって思ってた。

「くるみちゃんたちと行くんでしょ?あたしは今年は行けないから着て行きなよ!」

ね!とあたしの背中を押すお姉ちゃん。

くるみは浴衣着るかな?

一人だけ着て行ったら浮いちゃわないかな?

「咲耶、好きな子来るなら絶対着て行きな。」

お姉ちゃんがあたしの耳元で囁く。

浴衣、着て行ったら一ノ瀬君どう思うかな。

浮かれてるやつって思われない?

いや、あたし考えすぎ?

お姉ちゃんが帰ったあと、あたしはお姉ちゃんがベッドに置いていった浴衣を見つめた。

着て行ってみようかな。

せっかくのお祭りだしね。


「浴衣?あたし着ない。だって暑いもん。」

すぐにそう言ったくるみ。

そうだよね、くるみならそういう気がしてた。

「咲耶ちゃん浴衣着るの?」

千歩がキラキラした目で言う。