その日は全然部活に集中できなくて、パス練の相手してても間違えて葉先輩に思いっきり変な方向にボール飛ばしちゃうし、浅丘君(弟)にドリンクを渡そうとしてこぼしちゃうし散々だ。

けど、よかった。

一ノ瀬君の、好きな人。

いるのかな?

どんな人なのかな。

そんなことを考えながら家に帰ると、玄関にお父さんのではないスニーカーが置いてある。

「ただいまー…」

「おっ、咲耶!おかえり!」

キッチンから顔をのぞかせているのはお姉ちゃんの彼氏、琢磨君。

「あー!琢磨!鍋!吹きこぼれてる!」

「わ!ごめん、ごめん!」

お姉ちゃんがキッチンの奥から出てくる。

「咲耶おかえり!今日は琢磨スペシャルディナーだよー。」

琢磨君はイタリアン料理のレストランで働いてる。

だからこうしてたまに家に来て料理を振舞ってくれるんだ。

「お父さんたち帰ってくるまでに終わりそう?」

高校の時から付き合ってる二人はすでに両親公認。