「じゃあ私たち帰るね!」

「また明日な!直!」

笑顔の二人を見送って、俺はため息をつく。

先週から付き合い始めた望と千歩。

幼馴染の二人は実はずっと両思いだった。

俺の入る隙間なんて1ミリたりともなかったことに気がつくのは少し遅かったかな。

だけどギリギリ間に合ったんじゃない?

だって俺は千歩と望を応援してやることができてる。

あの二人を祝福することができてる。

これでよかったんだ。

そう思えてる自分が半分くらいいるから間に合ったって思いたい。

時計は6時前。

俺もそろそろ帰ろう。

放課後の学校はいろんな音で溢れてる。

吹奏楽部の音、運動部の掛け声。

そんな中を俺は一人で帰る。

「一ノ瀬君、今帰り?」

玄関口にいたのはジャージ姿の秋山さん。

「うん、秋山さんまだ部活?」

「もうすぐ大会だから…」

そういやそんなことを愛姉が言ってたっけ。

バスケ部は合宿なんかもあるらしい。