最悪だ。

でもなんであたし、こんなに一ノ瀬君に知られたくなかったんだろう。

「気にしないほうがいいよ、あいつらがチビなだけだから。」

へ?

「俺、フランスにいたことあるんだけど向こうの人背高くてよくチビってからかわれた。でも別にそんなの人それぞれ個性じゃん。気にすることないよ。」

あたしを見上げる一ノ瀬君。

そのまっすぐな目になんだかとても胸がすっと降りるような、スッキリした気持ちになった。

「身長なんて体の長さだよ、そんなのにこだわるなんて時間の無駄だよ、ってこれは母さんの受け売りだけど」

…お姉ちゃんと同じこと言ってる。

「…ありがとう、一ノ瀬君。」

「…?どういたしまして。ほら、行こう。俺ら始めだからまたせたら大変だよ。」

そう言って歩き出す一ノ瀬君。

廊下の窓からさしこむ春の光が一ノ瀬君をキラキラさせてる。

そのビー玉みたいな目に、いつか映りたいってあたしは思う。

きっとこれは、恋の始まりだ。