なんでも一ノ瀬家目当てに入った人もいるんだとか…

「一ノ瀬ってまさか…あの？」

「うわ、通りで整ってるわけだ、やべえな！」

そんな声を聞き流すかのように窓の外の桜を眺める横顔が綺麗すぎて、あたしは思わずぼーっと見とれてしまう。

「次の人！秋山さーん？」

へ！？

あ、あたしか…

なんか緊張するな…

ガタ、と席を立つ。

「うわ、デカ。」

そんな小さな声まで聞こえてしまうほど、あたしは人の目が怖い。

大丈夫、言われ慣れてる。

いってる本人だって悪気があるわけじゃないこと、知ってるもん。

ただ、本当にそう思って声に出ちゃったんだよね。

あたしが一ノ瀬君を綺麗だって思ったのと同じ。

なんて考えるのは少しすうずうしいかな。

「秋山咲耶です、日向中からきました。中学までバスケをやっていました。よろしくお願いします。」

当たり障りのない自己紹介。

我ながら無難で面白くないなって思う。