それはレモン味の飴。

よく律兄が喉にいいから舐めろ!って押し付けてくるやつ。

「これ、元気が出る飴なの…!あたし試合の前とかにいつも食べてて…」

秋山さんは慌てたように言う。

…なんか、少し心が和らいだ。

「一ノ瀬君、レモン嫌い?」

心配そうに秋山さんは言う。

そういえば秋山さん、男子バスケ部のマネージャーだっけ。

千歩と仲良しなんだけど、千歩より俺より背が高いから目立つ。

隣の席だからたまに話すけど話しやすくて嫌味のない印象。

だけどなんで顔、そんなに赤いんだろ。

むしろ秋山さんの方が熱でもあるのかな、って。

「秋山さん、ありがとう。」



俺は飴を受け取った。

帰り道、一人で舐めたその飴はいつもより少しすっぱくて、苦かった。