だから寂しくても、俺は何も言えずにフランスのおじいちゃんの家で留守番。

たまに帰ってきた母さんがまた少し痩せているのが気になるけど言えなくて。

だって俺のためにこんなに頑張ってくれてる。

本当は寂しかった。

家に帰って、おじいちゃんも仕事でいなくて、真っ暗な部屋で一人で過ごすのは。

だけど強がってた。

そして、俺の前に現れたみんな。

「ねえ、直。母さん、大切な人ができたの。」

そう言われた時、心臓が救われたような、ひやりとした何かを押し当てられたような。

そんな気分になった。

俺は邪魔なんじゃないか。

父さんが亡くなって十年。

ずっと俺のことばかり考えてくれた母さんがやっと見つけた幸せ。

だから俺は、こういうしかなかった。

「おめでとう!」

新しい父親になる大地さんはとても優しくて。

あったかくて、大きくて。

この人となら、母さんはきっと幸せになれる。