「一ノ瀬直です。」

そういったとたん、教室内が少しざわつく。

なんでだ?

俺、そんなに変なこと言ってないよね?

てかまだ名前しか言ってない。

ただいま高校に入っての初めてのホームルーム。

そして自己紹介の真っ最中。

俺の苗字は一ノ瀬、だから三番目だ。

「部活はまだ考えてません、よろしくお願いします。」

そういって座ると、前の席に座っていた女の子がこちらを振り返る。

「ねえねえ、一ノ瀬君ってお兄さんいない?」

目をキラキラさせながら聞いてくる。

「うん、いるよ。」

正確には最近できた、といったほうが正しいかもしれない。

「やっぱり!」

「えっ、あたり?すごーい!さすが一ノ瀬家の遺伝子!」

一ノ瀬家の遺伝子?

なんだそれ。

「こらそこ、まだ自己紹介の途中だぞ!」

厳しそうな担任に目をつけられちゃ、やってけない。