「妹さんと仲良いんだね。」

「あっ、ごめん。俺なんか変な話ししちゃって…」

一ノ瀬君は恥ずかしそうに笑うと、コーヒーをぐいっと飲んだ。

「俺、よく言われるんだ。こんなんだからいつまでたっても彼女出来ないんだって。」

あはは、と苦笑いする笑顔に、なんだか他人ごとと思えない。

「変だよな、大学生にもなって誰とも付き合ったことないとか…引くよね。」

「そっ、そんなことないよ!」

「綾瀬さん?」

私は思わず大きな声で、しかも立ち上がっていた。

周りのお客さんがこっちを見てる。

恥ずかしくなって、すぐに座る。

「…私も、まだ誰とも付き合ったことないし、それに、恋すらしたことないもん…」

和華ちゃんにしか話せなかった、本当の悩み。

なんで今日会ったばかりの一ノ瀬君に話しちゃうんだろう。

「そっか…」

「うん、それにね、恋ってしたくてできるものでもないと思うの。恋したことないやつが何言ってんだって感じだけど、しようと思ってなくてもしちゃうのが恋なのかなって思うの。」