「ごめん、待った?」

全力疾走したせいで息がきれる。

いつもギリギリ、遅刻寸前の私に彼はいつもどおり、優しく穏やかな笑顔を向けてくれる。

「大丈夫だよ。それより、みい、髪はねてる。」

えっ!うそ!

せっかくセットしてきたのに!

「どこ?」

「ここ。」

そう言って髪に触れてくる彼の手に、ドキドキする。

付き合ってもうすぐ二ヶ月。

未だに私の彼氏、だと言われても信じられない。

それくらいに彼は完璧なのだ。

一ノ瀬優、私は優ちゃん、と呼んでいる彼は七年前まで隣の家に住んでいた幼なじみ。

去年の春、私はお父さんの転勤で行っていたアメリカから七年ぶりにこの街に帰ってきた。

そこで再会した、優ちゃんと双子の兄の真ちゃん。

転勤する前、実はずっと優ちゃんが好きだった私。

だから再会出来てすごく嬉しかった。

そしてなんと二ヶ月前、彼から告白されて付き合うことになったのだ。