「あの、お名前は?」
「りょーだよ、きみは?」
「私はあけみ、朱色の朱に美しい。りょーさんはどんな字書くんですか?」
「涼やかでりょー」それを聞いてまた笑い出しそうになり、そうなんですねと答えた。
「おしりのポケットにいつも文庫入れてるんですね」私がそう言うと、涼さんは、ふふんと笑って、その本を見せてくれた。それは、ヘッセの詩集だった。