再び雨に濡れる彼を、わたしはまた手を伸ばし傘の中へ入れる。
自分が濡れるのは分かっているけど、わたしより今は彼だ。
一度携帯を引っ込め、文字を打ち彼に向けた。
【このままじゃ風邪引いちゃいます】
「……だから何だっていうんです?貴方には関係ないでしょう」
口だけが動き、切れた傷から血が出ているせいで、雨の水で赤い雫が、彼の白い服を染める。
彼が言っていることは、わたしも思ったこと。
関係ない、って。
やはり、見てみぬふりをした方が良かったのだろうか……
わたしはゆっくりと携帯を引いて、濡れた画面を腰で拭いた。
このままわたしが帰ったら、彼はいつまでこうしているのか分からない。
それならばいっそ──
わたしは彼に提案を持ちかけた。
【とりあえず、雨宿りしませんか?】
【わたしの家、歩いて少しですから】