一瞬、わたしの中にためらいがうまれるも、買い物袋を水溜まりを避けて置き、ポケットから出した携帯を手にする。


そして彼の前にしゃがみ、びしょ濡れの彼を傘にいれた。





【大丈夫ですか?】





傘を持つ手を伸ばしながらの体勢で、アンバランスだが、片手でもこのくらいの文字は造作もない。


彼に見えるよう下から携帯を向ければ、濡れた髪のせいで顔は見えないものの、照らされた傷は新しいものだと分かった。

さっきは顔半分しか見えなかったけど、頬は赤く腫れ、口の端が切れている。






──やっぱり。






しばらく画面を見つめいたであろう彼は、やっと顔を上げわたしを見据え、










「……っ近寄んないでもらえます?」








傘を持つ手を押しのけた。