恋に恋したことしかないような私は、片思いに近い感情のやり場に困っている。
　自分の気持ちを否定すればするほど、一ノ瀬くんのことを異性として意識してしまう。

　買って来た恋愛小説を読み耽りながら、頭の中は土曜の午後の約束のことでいっぱいだった。
　今日は水曜日。
　明日は木曜日。
　その次は金曜日。
　どんなにがんばっても土曜日の午後にワープは出来ない。

　学校ではびっくりするくらい接点がないままだ。
　そもそも一ノ瀬くんは授業中以外ほとんど教室にいないからかもしれない。
　変に意識しすぎることなく助かるけれど、土曜の約束も夢みたいに感じてしまう。
　しかし頬をつねって現実かを確かめるように見るメッセージの履歴は、確かに存在するのだ。


　放課後に静かな図書室へ寄ると、仲良く肩を並べて勉強している男の子と女の子がいた。
　ときおり小声で会話をする姿が親密そうで、幸せそうで、私にもいつか微笑み合えるひとが出来るのだとしたら、早くその人に会ってみたい。