「栞さぁ……」
「うん？」
「好きな人いるでしょ？」

　麻美ちゃんと休み時間に小テストのための勉強をしていると、彼女は隠しても無駄だとばかりに言い当てた。
　嘘をつきたくもなくて、素直に「……うん」とだけ返す。

「やっぱり！なんか最近、前よりかわいいもん。いいなぁ、付き合ってるの？」
「え！？いや……ただの片思い、で」
「告白は？しないの？このごろ男子も栞のこと気にしてるみたいだし、好きな人も栞のこと気にしてるかも」
「それはないかな」

　あっさりと私は麻美ちゃんの言葉を否定してしまう。
　
　一ノ瀬くんは同じ歳か疑いたくなるくらい自分の軸がとてもしっかりしていて、将来の夢を追いかけるべく今できることに一生懸命で、私はそんな彼の話を味方となって聞いてあげることしかできない。
　
　親しくはなったけれど、『友情なのかな？』と思うことも増えた。
　
　彼が優しいからときどきこれは愛情なのかもしれないとドキドキするのは相変わらずだけど、彼が私に求めているものが友情ならば、私もそのつもりで一ノ瀬くんとはずっと仲良くしていたい。