また明日は、……お休みで会えないし。
 学校で会っても他人のふりみたいになるし。
 次の約束をするのも重い気がする。

 悩んでうつむいてしまっていた私の顔を、一ノ瀬くんの大きな手が包むように触れて持ち上げられると、目と目があってキスでもされるのかとドキドキした。
 彼は着ていたコートのポケットから、リップクリームを取り出して私の唇に優しく塗ると「またね」とだけ言って、背を向けて歩き出す。
 潤った唇に指先で触れたあと、はたと気づいて顔がどんどん熱くなった。

 ——間接キスだ。

 この日から一ノ瀬くんとのメッセージアプリでのやりとりに『おやすみ』と、朝には『おはよう』のあいさつが必ず加わるようになった。
 学校では私たちの関係は何も変わらないけれど、休みの日や放課後にもドラッグストアで会う機会は増えて、距離が縮まっていく気がして嬉しくて楽しくていつも一ノ瀬くんを想ってドキドキする日々だ。
 外で会うにも肌寒い季節に私たちの距離感はさらに縮まっていく気がした。