案の定、翌日は寝坊をして学校には遅刻ギリギリで教室に駆け込んだ。

「遅刻ギリギリなんて珍しいね?寝坊?あーわかる、栞のことだから遅くまで本でも読んでたんだ」
「そ、そういうことに……して、おいてください」
「そういうことに?……しておいてください?」

 息切れしながら誤魔化して答えることを麻美ちゃんに申し訳なく思いながら自分の席に着く。
 恋は身を削るものかもしれないと頭を抱えるように机に突っ伏して、一ノ瀬くんをそうっと見ると大きなあくびをひとつしていた。
 他に変わった様子はなさそうで、その余裕が羨ましい。
 私は突然夜のあいさつメッセージをひとつやりとりしただけで寝不足なのに。
 けれどそこまで一ノ瀬くんを意識してしまっているのは私の問題で、何か特別なメッセージを送って来たわけでもないのだから彼は何も悪くない。

 金曜の授業後は週の終わりの疲れと、思いがけない寝不足で帰る頃にはへとへとだった。
 ……はずなのに、帰宅する頃には土曜日の約束の時間までカウントダウンがはじまったかのようにそわそわしはじめる。
 
 今夜は眠れるだろうか。
 また彼から『おやすみ』のメッセージが届くのだろうか。

 メッセージの履歴を眺めながら、今夜は自分から送ろうかとも悩む。
 
 スマホに指先で『おやすみなさい』とだけメッセージをつづっても、それだけでドキドキしてなかなか送信が出来ない。
 でも彼と仲良くなりたいんだったらこれくらいは出来なくてどうする!と言い聞かせて、震える指先でトンとスマホに触れメッセージを送信した。