その声で、顔を見なくてもすぐに分かった。星凪くんは今、すごく拗《す》ねている!

「…嫌じゃ、ない。でも。」

「でも?」

「その…此処、外、だし、子供たちいっぱいだし、だから…。」

「じゃあ、お持ち帰りで。」

…っ⁈

顔を上げると、星凪くんがイタズラな顔をして、ひょいっと、軽々しく私をお姫様抱っこした。

「…え?ちょ、星凪くんっ⁈何してんの?恥ずかしいから下ろして。なんか、みんな見てる…。ねぇってば!」

こんなの、初めてだし。みんな見てるしで、なんかもう恥ずかし過ぎて死ぬ。

「俺は今すぐにでも、ちゅーしたいのに。お前が俺に我慢させるから、仕返し。」

イタズラに笑う星凪くんが可愛くて、もうダメだ。何も言えない。恥ずかしさのあまり、私は俯いた。

「冗談だって。お前が困るような事、本気でしたりしねぇよ。ほら、機嫌直せよ。」

ベンチで下ろしてくれて、顔を合わせてくれない私に、彼は言う。

私は、星凪くんが隣に居てくれるこの時間が好きだ。
自分の事も好きになれる気がするし、何より温かい。

このまま夏休みが終わらなきゃいいのに。
そう思っても、もうすぐ新学期が始まる。