逃げたい、今すぐに。

目頭が熱くなり、涙が今にも溢《あふ》れてしまいそうだから、私は空を見上げた。

星凪くんは優しいから、泣いて縋《すが》れば、戻れるかもしれない。そんな事ばかり考えて、涙は頬を濡らしていく。

「愛莉菜。」

約束の時間まで、まだ1時間くらいあるのに、星凪くんの声がして、私は振り返る。

そこには、悲しそうな顔をした彼が居た。そして、泣いてる私を抱き寄せて、「ごめん」を繰り返す。

「…俺、最低だろ?本当は、全然優しくないんだ。愛莉菜だから、優しくしてた。いっぱい優しくして、貢いで、俺が居ないと生きられないようにしようって、内心思ってた。ってか、今でも思ってる。」

私を抱き締めるその手は強くて、彼の腕の中からは逃げられない。

「SNSでさ、偶然お前のアカウント見つけて。お前と絡みのある奴らが、お前が動いてなくて寂しがってて。なんか知らねぇけど、それに嫉妬してさ。しかも、お前のフォロワーに俺の中学の同級生居て、なんか、そいつ気に食わない奴だったし、だからSNS通じて、そいつ呼び出した。」