ダメだ、上手く話せない。

お母さんとの買い物の帰り道で、星凪くんを見かけて、その顔が頭に浮かんで離れてくれなくて。

星凪くんが、怖いの。

「そっか、返してもらえたなら、良かったじゃん。ごめん、俺、愛莉菜だとは知らずに…。」

「…ううん、私の方こそごめんね。急に電話なんか。知らない番号で、びっくりしたでしょ?」

本当は聞きたい事がある。
今週会えなかった理由とか、今日、本屋さん前で誰と電話してたんだろうとか、私以外には冷たいのかな?とか。でも、聞けるはずない。

「まぁ、びっくりはしたけど。ってか、まじでごめん。俺、苛々《いらいら》してて、それで、怖い思いさせたよな…。やばいよな、本当まじで。糖分足りてねぇんだわ。あ〜会いてぇ。」

声が、いつもの星凪くんに戻っていく。

「私も、星凪くんに会いたい。今週、会えてなかったし…。」

「だよな。会えなくてごめんな。喧嘩しててさ、弱いくせに馬鹿だよな、本当。けど、ムカつく奴居て、黙ってられなくて。そしたら、ボッコボコにされてさ。」

電話の向こうで、星凪くんは笑う。