「妹ちゃんじゃなかったのか。女って、あっは!ガキじゃん!」

「何お前ら、付き合っちゃってんの?喧嘩もロクに出来ねぇ、不良ごっこしてるだけだろお前らは!」

男たちは嘲笑《わら》う。

「"ごっこ"じゃねぇ!俺も、愛莉菜《ありな》も不良なんだよ!」

男たちと殴り合う彼が、どうしてだか、すごく怖くて。あぁ、星凪くんは本当に不良なんだなって、改めて思い知らされる。

容赦なく降りかかる暴力に、彼は暴力で応える。

"暴力は暴力で返す。何十倍にしてでも。"それが彼なんだと、知った瞬間だった。

不良集団と殴り合っている姿は、ケーキの甘さも優しさも感じられないくらい、そこには私の知らない彼が居た。

「くっそが…っ!まじ、痛《いて》ぇんだよ!あ〜カッコわるっ、俺。愛莉菜、怪我、ねぇ?」

男たちが去って行って、傷だらけで倒れている星凪くんが、私を見つめる。そして手を伸ばし、私の頬に優しく触れた。

「うん、私は全然。けど、星凪くんが…。ごめん、私、何も出来なかった…。」

「なんでお前が謝んの?悪いのは全部、あいつらだろ。あ〜まじ痛ぇ…。なんか、腹減った。昼、まだだったよな?」