カバンを床の上に投げ捨てて、私は制服のままベッドにうつ伏せになる。そして耳を塞《ふさ》いだ。

私が不良になったのは、家に居る時間を少しでも減らすために、夜遊びを始めたのがきっかけ。

夜遊び=不良
そんなイメージがあって、なんだか自由に思えた。

殴り合いはした事ないけど、先輩に目をつけられて怖い思いを何度もしたのに、不良を止める気がない。
それは、怖い思いをしても、家に居るよりはマシだから。

仕事ばかりのお父さんは、家の事はお母さんに任せっきり。それで私が悪い子だから、2人の口喧嘩は増えて、不仲継続中。

此処に、私の居場所はない。甘く優しい時間に戻りたいよ…ねぇ、星凪《せな》くん。

しばらくして、喧嘩は収まったのか静かになったみたい。私は床に投げ捨てたカバンに手を伸ばし、中からお菓子を取り出す。

それは、帰り際に星凪くんがコンビニで買ってくれた、彼オススメのチョコブラウニー。

時計を見ると、針は11時を指している。いいよね、こんな時間に食べたって。お腹空いたもん。