ほら、また始まった。2人の口喧嘩。

お母さんは食器を洗い終え、椅子に腰を下ろす。そしてお父さんに反撃。

「最初は反対してたけど、貴方だって納得してくれたじゃない!過去を掘り返して、いつまでも私にばかり、色々押し付けるのやめてほしいわ。」

帰らなきゃ良かった。
ずっと、星凪《せな》くんと一緒に居れば、こんな思いしなくて済んだはず。

私が悪い。分かってる。此処には、自由なんてない。

「愛莉菜、お前が門限とか約束守らないからだぞ。だから父さんと母さんは、こうやって口喧嘩になるんだ。お前は不真面目過ぎるんだよ。一体誰と遊んでるんだ?」

「今日も甘い匂いがするわ。香水買ったの?それはないわよね?お母さん、お小遣い1円だってあげてないんだから。」

甘い匂い…?嘘、全然気付かなかった。
制服にきっと、星凪くんの匂いが染み付いてるんだ。彼は、甘い香水を好むから。

「うるさいなぁ。なんだっていいでしょ!どうせ、私の話なんて聞かないんだから!」