破局
この返信を最後に、LINEの既読がつかなくなった。2日、3日と経ち、音信不通のまま二週間が過ぎた。今日も彼女は公共の場には姿を見せないのだろうか。そんな朝、偶然バッタリと顔を合わせた。
「おはよう」と彼女が何気なく言う。私はもそもそと顔色を伺いながら、「15日、キャンピングカーショー行ける?」と尋ねる。
「行けるよ」との返事にホッとし、LINEを確認するが、やはり既読はつかない。しかし、日常の会話は続く。この場面では積極的にコミュニケーションを図るしか方法はない。夜、家に帰ると、ついに既読がついていた。
「この二週間、陽子ちゃんについて色々と悩み、考えた。そして、付き合うことに決めた」と伝えると、「私も色々悩んでいたよ」と返信が来た。ふと、思い出した。これはスピリチュアルの世界でいう「サイレント期間」だ。そして、また毎日のようにLINEで会話が続くようになった。恋愛の話、結婚の話と、話題は尽きない。お出かけの当日、私は寝坊してしまった。電話も鳴っていたが、気づかないまま彼女からの連絡を逃してしまった。
「今日は連絡がなかったので、友達と遊びに行きます」と、彼女からのメッセージが届く。三度目のデートは未遂に終わった。今月は、彼女との間で感情の浮き沈みが激しかったため、ついストレス発散にお金を浪費してしまった。来月の給料日には福岡への旅行を約束している。しかし、彼女の心の奥にはまだ別の誰かがいるようで、白黒はっきりしない関係が続いている。私の心にも、別の女性・優香ちゃんの影がちらつく。
今月、偶然優香ちゃんとも再会したものの、特に進展はなかった。来月の給料日、もう一度彼女を誘ってみるのも一つの手だが、優香ちゃんもまた、自分の気持ちを曖昧にしている。彼女を信じるしかないのだが、彼もまた一方的に好意を寄せているだけのようだ。
明日はデートだが、朝からなんだかモヤモヤする。急遽彼女に電話をかける。
「今日、デートしない?」
明日は映画の予定だった。陽子が観たい映画を提案してくれたのだが、調べてみると、既に公開が終わっていたため、映画は中止に。陽子は見たくないものは見ない性格だ。私は「漫画図書館はどう?」と提案し、彼女も一旦は賛成する。しかし、彼女が「帽子が欲しい」と言い出し、先に光の森で買い物をすることに。次に桜町で買い物をする話をすると、即決となる。
二度目のデートも桜町で失敗しているので、不安が頭をよぎるが、決まったものは仕方がない。待ち合わせ前に彼女は「公共の場に用事がある」と言って、私をその場に呼び出した。これではみんなにバレバレな行動だが、車を走らせる。陽子は相変わらず奇抜なファッションで、大きなリュックサックを二つも背負っていた。突っ込んだら怒られそうなので、リュックについて触れるのはやめた。コンビニで飲み物を買い、桜町へ向かう。車内では普通に会話が弾み、現地に着くと熊本城の駐車場に車を停め、そこから歩くことになった。私は体力が衰えてきたのか、途中で彼女に支えられながら歩いた。桜町に着くと、陽子が「ハンカチが欲しい」と言う。600円程度のものだが、心の中で「もっと良いのを選ばないのか」と呟いてしまう。パンを買って食べていると、陽子が「近くに友達がいるから呼んでいい?」と言ってきた。これではデートではなくなるが、仕方なく了承する。その友達は夫婦で、キリスト教の使者だった。彼らとコンビニでパンを買い、家へと向かう。よくしゃべる二人で、スピリチュアルのビデオまで見せられたが、面白くない映像で眠気が襲ってくる。お昼過ぎに帰路に就く。陽子ちゃんの突発的な行動には振り回されっぱなしで、これはデートと言えるのだろうか。
「ごめんなさい、もう一緒に行くのはやめます」
「そうですね、私も謝ります。もう行きません」
「でも、ゆっくりと食事したいですね。例えばイタリア料理とか。電車で熊本に行って、運転の疲れもなく、ゆっくり話をして食事を楽しむっていうのはどうでしょうか?」
「年金までには間に合わないけど、そうしましょう」
「わかりました。友達と遊ぶ方が楽しいかもね」
「うん、私も遊び友達が得意じゃないから…」
「そうですか、ありがとう。では、また美味しいものを食べたくなったら誘ってください」
「もちろん。お互い、まだ慣れていないですし、相手のこともまだ分からないですね」
「でも、今日のデートは勉強になりました。お金に余裕がないとこうなるんだな、と。でも陽子ちゃんは面白い人です。予想外の行動に驚かされますよ」
「そうですか?じゃあ、今度のデートで少し高めのプレゼントをお願いします」
「それもいいですね。ファッション好きなんだから、遠慮しなくていいよ」
「わかりました。次は遠慮せずにおねだりしますね」
「よかった。じゃあ、6月18日の土曜日、桜町で四度目のデート。プレゼントの予算は1万円、食事はご馳走するよ。どう?」
「ありがとうございます。楽しみにしています」
この返信を最後に、LINEの既読がつかなくなった。2日、3日と経ち、音信不通のまま二週間が過ぎた。今日も彼女は公共の場には姿を見せないのだろうか。そんな朝、偶然バッタリと顔を合わせた。
「おはよう」と彼女が何気なく言う。私はもそもそと顔色を伺いながら、「15日、キャンピングカーショー行ける?」と尋ねる。
「行けるよ」との返事にホッとし、LINEを確認するが、やはり既読はつかない。しかし、日常の会話は続く。この場面では積極的にコミュニケーションを図るしか方法はない。夜、家に帰ると、ついに既読がついていた。
「この二週間、陽子ちゃんについて色々と悩み、考えた。そして、付き合うことに決めた」と伝えると、「私も色々悩んでいたよ」と返信が来た。ふと、思い出した。これはスピリチュアルの世界でいう「サイレント期間」だ。そして、また毎日のようにLINEで会話が続くようになった。恋愛の話、結婚の話と、話題は尽きない。お出かけの当日、私は寝坊してしまった。電話も鳴っていたが、気づかないまま彼女からの連絡を逃してしまった。
「今日は連絡がなかったので、友達と遊びに行きます」と、彼女からのメッセージが届く。三度目のデートは未遂に終わった。今月は、彼女との間で感情の浮き沈みが激しかったため、ついストレス発散にお金を浪費してしまった。来月の給料日には福岡への旅行を約束している。しかし、彼女の心の奥にはまだ別の誰かがいるようで、白黒はっきりしない関係が続いている。私の心にも、別の女性・優香ちゃんの影がちらつく。
今月、偶然優香ちゃんとも再会したものの、特に進展はなかった。来月の給料日、もう一度彼女を誘ってみるのも一つの手だが、優香ちゃんもまた、自分の気持ちを曖昧にしている。彼女を信じるしかないのだが、彼もまた一方的に好意を寄せているだけのようだ。
明日はデートだが、朝からなんだかモヤモヤする。急遽彼女に電話をかける。
「今日、デートしない?」
明日は映画の予定だった。陽子が観たい映画を提案してくれたのだが、調べてみると、既に公開が終わっていたため、映画は中止に。陽子は見たくないものは見ない性格だ。私は「漫画図書館はどう?」と提案し、彼女も一旦は賛成する。しかし、彼女が「帽子が欲しい」と言い出し、先に光の森で買い物をすることに。次に桜町で買い物をする話をすると、即決となる。
二度目のデートも桜町で失敗しているので、不安が頭をよぎるが、決まったものは仕方がない。待ち合わせ前に彼女は「公共の場に用事がある」と言って、私をその場に呼び出した。これではみんなにバレバレな行動だが、車を走らせる。陽子は相変わらず奇抜なファッションで、大きなリュックサックを二つも背負っていた。突っ込んだら怒られそうなので、リュックについて触れるのはやめた。コンビニで飲み物を買い、桜町へ向かう。車内では普通に会話が弾み、現地に着くと熊本城の駐車場に車を停め、そこから歩くことになった。私は体力が衰えてきたのか、途中で彼女に支えられながら歩いた。桜町に着くと、陽子が「ハンカチが欲しい」と言う。600円程度のものだが、心の中で「もっと良いのを選ばないのか」と呟いてしまう。パンを買って食べていると、陽子が「近くに友達がいるから呼んでいい?」と言ってきた。これではデートではなくなるが、仕方なく了承する。その友達は夫婦で、キリスト教の使者だった。彼らとコンビニでパンを買い、家へと向かう。よくしゃべる二人で、スピリチュアルのビデオまで見せられたが、面白くない映像で眠気が襲ってくる。お昼過ぎに帰路に就く。陽子ちゃんの突発的な行動には振り回されっぱなしで、これはデートと言えるのだろうか。
「ごめんなさい、もう一緒に行くのはやめます」
「そうですね、私も謝ります。もう行きません」
「でも、ゆっくりと食事したいですね。例えばイタリア料理とか。電車で熊本に行って、運転の疲れもなく、ゆっくり話をして食事を楽しむっていうのはどうでしょうか?」
「年金までには間に合わないけど、そうしましょう」
「わかりました。友達と遊ぶ方が楽しいかもね」
「うん、私も遊び友達が得意じゃないから…」
「そうですか、ありがとう。では、また美味しいものを食べたくなったら誘ってください」
「もちろん。お互い、まだ慣れていないですし、相手のこともまだ分からないですね」
「でも、今日のデートは勉強になりました。お金に余裕がないとこうなるんだな、と。でも陽子ちゃんは面白い人です。予想外の行動に驚かされますよ」
「そうですか?じゃあ、今度のデートで少し高めのプレゼントをお願いします」
「それもいいですね。ファッション好きなんだから、遠慮しなくていいよ」
「わかりました。次は遠慮せずにおねだりしますね」
「よかった。じゃあ、6月18日の土曜日、桜町で四度目のデート。プレゼントの予算は1万円、食事はご馳走するよ。どう?」
「ありがとうございます。楽しみにしています」