このもじゃもじゃなパーマが
天然ものなのか人工的なものなのか
京子は興味もないのだが、

白衣の下の薄ピンク色のシャツと
茶色いネクタイに紅色の聴診器、
それに色付き眼鏡とは
いささかセンスを疑うものがある。

以前はよくわからない、
どこかの国のスカーフを巻いていたが、
京子が

「趣味わっる」

と言った日からつけてこなくなった。

京子は散々な毒を吐いてきたはずだが、
とりわけその一言が牧には刺さったらしい。


他の言葉も真面目に受け取ってくれないかな…


と常日頃思っているわけだが、
毎度この調子がぶれることはない。

そんな牧の上司である浅野が
手術室のパソコンでカルテを見ながら言った。


「牧くん、お楽しみ中に申し訳ないんだけど、
 この人やっぱりストーマ作った方が
 いいと思うんだよね」

マウスの上を長い指が動く。

牧はさっと立ち上がって
浅野の隣に立ちカルテを覗いた。

「僕もそう言おうと思ってました。
 一応本人と、ご家族にも電話で説明済みです」

「お!さすが、仕事早いね」

「いやいや~」


と言いつつ、チラッと京子を見ては
親指を立ててウインク。

『どう?褒められた僕、カッコいい?』

とでも言いたげな顔には反応せず
京子はシャーレに消毒薬を注いだ。