「もしもし!?美恵ちゃん!」

どうやら立花に電話をかけている様子。

「えっ!そんな!…無理だよ!ちょっと!」

俺の方を見ながら、なにかすごく慌てている様子。

春川が電話を切ると、同時に俺の携帯が鳴り始めた。

画面には中原隼人の文字。

「もしもし!ごめん!廉!今日俺行けなくなった!つうわけで日菜ちゃんとデートしてこい!な!」

は?

なんで隼人がここに春川がいることを知ってんの?

「おい、はや…」

突然切られた電話。

呆然と立ち尽くす春川と俺。

その無言を切ったのは春川の声だった。

「みっ、美恵ちゃん来れなくなっちゃったんだって!あたし、帰るね!」

隼人のやつ、多分また余計なことを…

そう思っていたのに、なんで。

「藤咲君?」

俺の手は無意識に春川の細い手首を掴んでいた。

不思議そうな顔をして俺を見上げる。

何やってんだ?俺は。

ここで春川を引き止めてどうするんだよ。