ありがとうね、いっちゃん。

でもね、本当は元気なんかでないの。

本当は今にも泣いちゃいそう。

藤咲君、やっぱりあのすごく美人な幼なじみと付きあっているんだよね。

あたし、バカだ。

また少しだけ、期待してたのかもしれない。

もしかしたら、あの人は藤咲君と付きあってはいなくて。

もしかしたら、藤咲君は本当に何か用事があってお祭りに行くのを断って。

だけど今日見た光景が目に焼き付いている。

入り込めない二人の空気。

二人にしかわからない、何かがあるような気がする。

せっかくの夏休み、せっかくのお祭りなのに、あたしの気分はモヤモヤ。

藤咲君と彼女、お似合いだもんね。

あたしとまるで正反対の彼女さん。

すらっと背が高くて、一糸乱れぬ黒髪のストレートヘアがきれいで、まるで本当にお姫様みたい。

お姫様と王寺様は結ばれるけど、脇役のあたしの恋は叶わないんだ。