きっと藤咲君は彼女とお祭りに行くから断ったんだろうな。

鏡に映る自分の姿に、うんざり。

もっと可愛かったら、スタイルが良かったら…

ううん、でも関係ないか。

藤咲君と彼女には何か他の人に入り込めないような雰囲気があるもん。

きっとそれは特別なんだ。

好きな人の特別になるってどんな気持ちなのかな。

あたしも早く、諦められるようにしないとね。

「ひーな、そろそろ行く…ってお前、泣いてんの?」

がちゃりと部屋のドアが開いていっちゃんが入ってきた。

「泣いてないよ!あくびしただけ!」

慌ててゴシゴシ頬をこする。

いつまでも引きずっていたって前に進めないのに。

諦めたいのに、好きなの。

しつこいよね、おかしいよね。

「日菜は浴衣着ないんだ?」

階段を降りながらいっちゃんが言った。

「うん、デートとかでもないしね。」

そう答えると、いっちゃんは急に立ち止まって後ろを振り返る。