修学旅行から帰ると、俺はすぐに月乃の携帯に電話をかけた。

ワンコールもしないうちにすぐに繋がった。

「月乃、今家の前にいるんだけど、でて…」

「鍵開いてるから、入ってきて…」

俺は荷物を置くのもそこそこに、月乃の家の扉を開けた。

「おじゃまします。」

月乃の祖父母は出かけているのか、家の中は真っ暗だ。

月乃の部屋のドアを開けると、月乃が抱きついてきた。

その感覚に、頭の中に春川の顔がよぎったのをすぐに消した。

「…廉!会いたかった…!」

小さく震えてる、月乃。

電話では確か、父親だという人物が訪ねてきたんだっけ。

「廉…私、嫌だよ…廉と、離れたくない!」

月乃はそう言うと、更に強く抱きついてきた。

俺はその細い肩に腕を回す。

「大丈夫、俺はずっとお前のそばにいるから。…だから、何があったかちゃんと話して?」

月乃の顔を見ると、目には大粒の涙が今にも零れ落ちそうなくらい溜まっていた。