だけど、俺たちは付き合ってるわけではない。

それでも俺には月乃のそばにいなければならない理由がある。

「あ、バス来ちゃった。じゃあね、また放課後ね!」

俺より一駅先にある女子高に通う月乃を毎朝こうして見送るのも日課。

手をふる月乃がバスに乗っていってしまうと思わず大きなため息をついてしまった。

俺は最低だ。

「間に合ったー…」

バタバタと激しい足音が聞こえ、バス停のベンチに座り込む、うちの高校の生徒。

激しく息を切らしているからそうとう走ってきたらしい。

俺が見ているのも全く気がつかないで息を整えてる。

少し茶色の柔らかそうな髪の毛には派手な寝癖。

思わず吹き出しそうになるのをこらえる。

「日菜!走んなくっても間に合ったじゃん!」

その後ろからその子の頭をくしゃくしゃしながらまたうちの制服をきた男がやって来た。

「もー!いっちゃん!やめてよー!」

…ん?この声、どっかで聞いたような…気のせいか?

「あ、バス来ちゃった!いっちゃん!早く!」

「日菜慌てすぎ、寝癖すげえし。」

朝から見せつけてくるカップルだな…

本当にお互いのことが好きなんだなってわかる。

俺と正反対の二人だ。