結局、美恵ちゃんが中原君たちに四人で回ろうって言ってくれて、中原君は嫌がるかなって思ったけど快く了解してくれた。

藤咲君とはまだ話せていない。

中原君と並んで歩く背中を見つめる。

近いのに、遠い。

こんなに近くにいるのに、すごく遠くに感じる藤咲君の存在。

あたしって欲張りだな。

数カ月前まではただただ見つめるだけで満足だったくせに。

遠くから見てるだけで、廊下ですれ違えただけで嬉しかったのに。

同じクラスになって、隣の席になって、話すようになって。

藤咲君のこと、もっと知りたいって思っちゃう。

藤咲君には美人の彼女もいるのに。

あたしになんて入り込める余地ないのに。

二人の関係を崩すようなこともしたくない。

そんなこと、望まない。

「日菜、おみやげ買わないの?ここで最後だよ?」

「うん…」

一番楽しみにしていた旭山動物園。

なのに可愛い動物を見ても、綺麗な魚たちを見ても気分は晴れない。