「かわいい…」

「でしょ!これね、ピーチの香りなんだ!」

いいにおい…

甘くて、なんだかウキウキしてくる、まるで美恵ちゃんの恋みたい。

「昨日の夜、廉君となにかあった?」

あたしの手にハンドクリームを塗ってくれながら、美恵ちゃんが言う。


昨日の夜、藤咲君は…

「何もないよ?」

何でもないんだよね。

あたしと藤咲君は友達。

あれは先生に見つかりそうになったから、偶然。

何でもない、なんてことのない、出来事。

なのにどうしてこんなに、胸が痛むんだろう。

どうしてこんなに、悲しい気持ちになるんだろう。

「日菜、やっぱり今日は四人で回ろう!最終日だしね!」

ごめんね…

弱くて、ごめんね。

迷惑かけて、ごめんね。

早く忘れたいのに、頭から離れない。

やっぱりあたし、藤咲君が好き。

かなわないってわかってるのに、どうしようもないくらいに好きなの。

本当に、好きなの。