修学旅行、最終日。

今日は一番楽しみにしていた旭山動物園での観光だ。

なのに、あたしの心はいまいち晴れない。

その理由は…

「ひーな、顔赤いよ?話し聞いてる?」

バスの中で美恵ちゃんが。肩を揺すった。

「へ?あっ、うん!」

「聞いてなかったでしょー!だから、今日もちょっとだけ隼人と二人で回っていいかな?」

顔を少し赤らめて話す美恵ちゃんはすごく可愛くて、普段のクールで知的な美恵ちゃんからは想像できない。

これも恋の力ってやつなのかな。

「うん!いいよ!」

付き合いたての二人だもんね。

しかもこの修学旅行の最終日、いい思い出作りたいよね。

「ほんと?日菜、ありがとー!なんか奢るね!」

ぎゅっと抱きつかれると、フワッといい香り。

「美恵ちゃん、甘い香りがする!」

「あっ、これ?ハンドクリーム!日菜にも塗ってあげようか?」

美恵ちゃんがカバンからピンク色のハートのケースを取り出した。