あわてて春川から離れた。

鳴り止まない心臓の音、むしろどんどん大きくなっている。

なんだ、これは。

「ただいまー!日菜ちゃん、ごめんね。」

隼人の呑気な声が、その場の空気を明るくする。

「ううん、じゃああたし、帰るね、おやすみなさい!」

春川は俺から逃げるようにして走って帰っていった。

「廉と日菜ちゃん、なんかあったの?」

あっけらかんと訪ねてくる隼人。

こいつ、やけに感が働く時があるんだよな。

「何も。ていうか、隼人帰って来るの遅い。」

もしあのまま、隼人が帰ってこなかったら、俺は春川に、なにかしてしまっていた?

いや、それはない。

「美恵と話こんじゃって。あ、そーだ!明日の最後の自由行動、ちょっとだけ美恵とまわらしてくんない?」

付き合いたての二人、そして修学旅行という最大のイベント。

そりゃあ二人になりたいんだろうな。

だけど、ということはまた春川と二人。