桜が並木道に舞う、春。

誰もがうかれて、新しいスタートに胸を躍らせる季節だ。

だけど、俺にとっては一番嫌いな季節。

あの時のことを思い出すから…

「廉?聞いてた?」

不満そうな顔で俺を見上げるのは、物心ついたときからの幼なじみ、冬山月乃。

「…ん?」

「もー!だから今日から新学期だねっていったの!」

ついあの時のことを思い出してしまっていた。

「廉…新しいクラスにかわいい子いたら、付き合っちゃったりするのかな…」

月乃は下を向く。

俺はそんな月乃の頭を撫でた。

「大丈夫、俺はお前のそばにいるから。」

すると月乃は顔をあげて、笑顔に戻った。

「ありがとう、廉。」

月乃と俺は端から見たら、付き合っているように見えるだろう。