はあ…

ため息をつくと、ベッドの上に放っておいた携帯が震え出す。

ディスプレイ画面を見なくても、だいたい誰からかはわかる。

「…もしもし?」

「…廉!今、平気?」

電話口から聞こえてきたのは、弱々しい月乃の声。

「どうした?なんかあった?」

「っ…廉…会いたいよ…廉に会いたい…」

多分、泣いてる。

月乃が泣くときはいつもそばにいてやらないと。

俺が、そばにいてやらないと。

「今日ね、家に男の人が来たの…」

男の人が?

話がよくわからない。

「誰?」

「私は学校からまだ帰ってなくて、あってないんだけどね、なんか…私の、お父さんだって、おじいちゃんたちに言ってきたらしいの。」

月乃の、父親?

月乃の両親は月乃がまだ小さかった頃に離婚していると聞いている。

そしてその後、月乃と母親の汐里さんは自分の実家に帰って生活を始めた。

今は祖父母と暮らしている月乃。