「萩原…」

そこにいたのは、隣のクラスの萩原伊月。

「どうしたの?日菜に用事?」

足に抱きついた女の子の頭を撫でながら言う。

「うん、プリント届けに来た。立花に頼まれて…」

調度良かった。

萩原に渡しておけば、確実に春川の手に渡るだろう。

「ああ、美恵に。サンキュ。」

萩原にプリントを渡すと、受け取った。

「優芽、中はいってろ。」

萩原がそう言うと大きくうなずき、走って家の中に入って行った。

「日菜の妹。四歳。」

入っていった玄関のドアの方を見ながら言う。

「春川って兄弟多いんだな。四人も…」

「四人?」

その言葉に怪訝そうに聞き返す萩原。

そして何かを納得したように頷いた。

「日菜、明日は学校行けそうだから。プリントありがとな。日菜に言っとく。」

春川のことをそんなふうに言う萩原は本当に春川と仲の良い幼なじみなんだな。

俺と月乃も、前はそうだったのに。

いつからだろう、月乃のそばにいることがまるで義務のようになっていったのは。