「日菜!」

バタバタと音がして、制服姿のいっちゃんが部屋の扉を開けた。

「日菜、大丈夫?なんで風邪なんか…傘持ってたよな?」

そう言うといっちゃんはあたしのベッドのそばに来て、頭を撫でてくれる。

いっちゃんの温かくて大きな手に、なんだか安心して、そしたら泣きたくなった。

「…っ…」

あたしはいっちゃんの胸に頭を預けて、泣いていた。

何がこんなに悲しいんだろう。

藤咲君に失恋したこと?

あたしの、初めての初恋が終わっちゃったこと?

自分でもわからない。

「日菜…なんかあった?」

いっちゃん…

つらいよ…悲しい…

言いたいけど言えない。

「なんでもないの…ごめんね…」

笑顔を作るといっちゃんを見上げた。

笑って、泣いたらダメだよ。

心配かけちゃダメ。

あたしがしっかりしないと。

あたしが、ちゃんとしてなきゃだめなんだから。