家に帰って、ご飯を作っていても頭のなかは藤咲君のことでいっぱいだ。

あんな態度とっちゃって、嫌われちゃったかな。

もしかしたらあたしが藤咲君のことを好きってことがばれちゃったかもしれない。

「…いたっ…」

ぼんやりしながらハンバーグに入れる玉ねぎを切っていたら、指まで切っちゃった。

慌てて水で流す。

「ひーちゃん!これ!イタイイタイよ。」

それに気づいた優芽が絆創膏を手渡してくれた。

「ありがとう、優芽!もうちょっとでできるから待っててね。」

優芽の柔らかい髪を撫でると、気合いを入れ直して料理を再開。





「姉ちゃん、これなに?」

「へ?」

真生が箸でサラダのキュウリをつまむ。

キュウリは見事に一本に連なっていて、切れてなかった。

「ごめん!」

「別にいいけど、なんかあったの?びしょ濡れで帰ってきたし。朝は傘持ってなかったっけ?」

真生が箸でキュウリを切りながら言った。

「顔も赤いし、熱でもあるんじゃない?早く寝なよ。洗い物は俺がしとくから。」

「でも、優芽のお風呂…」

「いいよ、それも俺がするから。」

真生ってぶっきらぼうなところもあるけど、すごく頼れるんだよね。

言われてみればなんだか頭がボーッとして、目の前も霞んで見える。


「ありがとう、真生。」

あたしはご飯を半分以上残したまま、部屋に戻ってベッドに倒れこんだ。