「ちゃんと告白もしてないのに、失恋したなんて言っちゃダメだよ。」

美恵ちゃんにそう言われ、納得したあたし。

次に会ったときに告白しよう。

絶対に、するの。

そう決めてバスに乗った。

窓から見える景色はまるであたしの心そのものみたいに暗くて重い空、しくしく泣いてるみたいな雨。

なんだか雨足も強くなってきたし、今日はあたしが晩御飯も作らなきゃ。

真生、優芽のお迎え行ったかな…

ちぃちゃん、夜食に作ったおにぎりとお味噌汁、忘れてないかな…

お父さんは今日、早いんだっけ…

そんなことを窓からの景色を見ながら考えていると、あっという間にバス停についた。

そこであたしの目に飛び込んできた人。


どうして、ここにいるの?

一番会いたくて、会いたくなかった人。

そっか、彼女さんを待ってるんだね。

今朝彼女さんが着ていた制服はお嬢様学校として有名な菫ヶ丘女学院の制服だった。

美人な上に、頭もよくて、お嬢様。

あたしに勝ち目なんてないよ。

やっぱり、王子様はお姫様と幸せになるものなんだもん。

優芽に読んであげたシンデレラの絵本。

「ひーちゃん、ゆめもいつかおひめさまになれる?」

そう無邪気に笑う優芽にあたしはこう言ったのに。

「なれるよ!シンデレラみたいにきれいな心を持ってたら、いつかきっと、王子様は現れるの。」

ごめんね、優芽。

だけど、言わなきゃ。

初恋だったの。

ちゃんと終わらせたい。

告白して、ふられて、終わらせるんだ。