俺の腕に掛けられた、きれいなレモンイエローの傘。

でもさ、それじゃあ春川が濡れるんじゃないの?

春川はいつでも他人優先だ。

そういえば、クラスでもみんなが嫌がる仕事を進んでやっている。

目たたないところで、誰かに言われてでもなく、まるで当たり前のことのように。

委員会だって、掃除だって、雑用だってそうだ。

「れーん!ごめんねー!」

バスから手をふりながら月乃が降りてきた。

「廉、朝、傘持ってなかったでしょ?あたし、気になって…あれ?」

月乃が俺の腕に掛けられた、春川の傘に目をやった。

「借りたの?きれいな色だね。」

まるで日だまりのような、暖かい黄色は雨を晴らす太陽のようだ。

「女の子の傘だよね?」

月乃が少しいたずらっぽく笑いながら俺から傘を手に取った。

「…うん。」

嘘をついても仕方ないよな。

「どんな子?廉が女の子と仲良くなるのって珍しいよね…」

月乃の表情がかたくなった。

「ただのクラスメイトだよ。帰ろ、月乃。」

「…うん…」

ただのクラスメイトだ、うん、本当にただそれだけだ。

今日見せた春川の表情だって、俺には関係ないことなんだ。

もう忘れよう。