終礼が終わり、いつも通りバス停に急ぐ。

今日はまだ月乃は来ていなかった。

ちょっと早かったか。

バス停のベンチに座って月乃を待つ。


30分後、雨が激しくなってきた。

遅いな…今日の朝、なんかあいつ言ってたっけ?

でも先に帰ってももしかして入れ違いになるかもしれないし。

メールしても返信が帰ってこない。

なんかあったのか?

急に心配になってくる。

月乃の学校まで行くか?

そう思ってベンチから立ち上がった瞬間、メールの着信音が鳴った。

『ごめん!委員会が長引いちゃって…今日は先に帰ってて!また夜行きます!』

はあ…

なんだ、そういうことか。

なんか安心した。

じゃあ帰るか…

濡れるのは仕方ない。

そう思って自転車に股がった。

「藤咲君!」

後ろから聞こえた声に、ブレーキを掛ける。

「春川…どうしたの?」

そこにいたのは、息をきらしている春川。

走ってきたのがすぐにわかるくらい、激しく息をしている。

「…えっと、…あの…」

俺は自転車から降りて、春川のそばまでいった。

「…っ…あのね…」

俺を見上げる小さな春川。

大きな目は心なしか潤んでいるような気がして、白い頬は赤く蒸気している。

一瞬、ドキンと心臓が鳴った気がしたのは、きっと気のせい。

「これっ!良かったら使ってください!じゃあ、また明日!」

持っていたレモンイエローの傘を俺の腕にかけると、ちょうどやって来たバスに乗り込んで、行ってしまった。