途端に自分の癖毛が恥ずかしくなってきて。

彼女、いたんだ。

やっぱりあの噂は本当だったんだね。

藤咲君には他校にものすごい美人の彼女がいるって。

なんだろう、この気持ち。

胸がぎゅうって締め付けられて、苦しくて、なんだか目頭が熱くなってきた。

わかってたことでしょ?

だってあの、学校中の女の子の憧れの的の藤咲君だよ。

みんなの王子さまみたいな人があたしみたいななんの取り柄もない女の子、相手にするはずないじゃん。

「日菜…?」

でもね、バカみたいだけどちょっとだけ、ほんの少しだけ、浮かれてたの。

あたしに笑いかけてくれる笑顔を見るたびにどんどん好きって気持ちが募っていく。

同じクラスになってから、もっともっと、藤咲君を好きになっちゃってるんだよ。

「日菜、どうした?」

目から溢れそうな涙をぐっとこらえて、いっちゃんの顔を見て笑った。

「大丈夫だよ!ちょっとボーッとしてた!」

大丈夫、泣くのを我慢するのは慣れてる。

笑顔をつくるのも慣れてる。