「ちぃちゃん、朝からテンション高いよ。」

眠そうに目を擦り擦り降りてきたのは弟の真生。

朝に弱い真生はいつも不機嫌ぎみ。

「日菜ー!俺のシャツどこー?」

バタバタと真生を押し退けて騒がしくリビングに入ってきたのは一応この家の主、父親の春川太一。

「もー!太ちゃんてば前の番に用意しとかないと!日菜だっていそがしんだから。」

呆れたように言うちぃちゃんよりお父さんのほうが8才も年上なのに完全にちぃちゃんのほうが権力が強い。

しかもちぃちゃんはお父さんの元教え子。

実はちぃちゃんから聞いた話によると、高校三年の時、新任教師としてちぃちゃんのクラスにやって来たお父さんにちぃちゃんが一目惚れして、それから猛アタックの末、卒業して付き合い始めたらしい。

二人には色々思い出があるらしく、まだ全部は知らないけど。


「パパー!しゃつってこれー?」

ワイシャツを片手にリビングに入ってきたのは四歳の妹の優芽。

「優芽!ありがとう!」

こうしてるとお父さんって本当に残念なイケメンって言葉がぴったりだ。

顔はかなりかっこいいけど中身はTHE草食系ってやつ。

ちぃちゃんはこのギャップ性がいいらしい。

「真生!今日朝練の日でしょ?早く食べないと遅刻する。」

「うわっ!やべ!てか姉ちゃんも!今日バスの日だろ?」

あっ!

「やばいっ!いっちゃん待ってる!」