月乃のことは好きだ。

そんなことは当たり前だ。

だけど俺は義務として、こいつのそばにいるのか?

そばにいたいって思うからだよな。

義務なんかじゃない、絶対に。

「廉?手、繋ご?」

「…ん。」

差し出された細くて白い月乃の手を握る。

月乃の手はいつも冷たい。

夏でも冬でも関係なく、ひんやりとしている。

「廉の手、温かいね。」

ふふっ、と笑って俺を見上げる。

『このままずっと月乃のそばにいるわけ?』

なぜかいつか隼人に言われた言葉が脳内に響く。

その答えはいつも決まっているはずなんだ。

だって俺は、約束したんだ。

俺だってこいつのそばにいたいんだから。

俺は月乃の体を抱きしめた。

「廉?どうしたの?」

道の真ん中で、近所で、誰かに見られてるかもしれないのに。

自分のなかの、なにかに揺らぎそうになる感情を塗りつぶす。

「やっぱり今日の廉、変だね。」

そう言いながらまわる月乃の腕。

なにも変わらない、これからもずっと。

俺はただ、月乃のそばにいる。